ドクターヘリ
救急処置を必要とする重篤な患者が発生した現場などに、救急医療に精通した医師と看護師を派遣する小型のヘリコプターです。機内には初期治療に必要な医療機器や医薬品などが搭載されています。日本では5種類の機種が運航しています。
ドクターヘリのミッション
ドクターヘリは単なる患者搬送システムではありません。最大のミッションは、救急現場へ迅速に医療チームを送り届けることによって、初期治療開始までの時間を短縮することにあります。そして、患者の状態を安定させて適切な医療機関に搬送することにより、救命率の向上や後遺障害の軽減などの効果を期待することができます。
- 現場出動 救急現場からの通報により、消防から要請を受けて出動します
- 施設間搬送 医療機関から、より高度な医療機関へ患者を搬送します
- 地域医療 医療機関のない過疎地・離島へは重篤な緊急性に関わらず派遣し、医療格差をなくします
- 大規模災害 多数の傷病者が発生した被災地へ、都道府県を越えて活動します
全都道府県にドクターヘリが配備
日本でドクターヘリの運航が始まったのは2001年4月、岡山県で導入されたのが最初でした。きっかけとなったのは1995年1月に発生した阪神・淡路大震災で、ヘリコプターを駆使した救急医療活動ができなかったことを教訓としています。このため、ドクターヘリ導入に向けた整備が進み、2011年に発生した東日本大震災のときは当時配備されていた26機のドクターヘリのうち18機が現場に出動し、救助活動を行いました。
その後もドクターヘリが普及し、2023年4月現在、56機が全国に配備されています。京都府にはドクターヘリの基地病院がありませんが、関西広域連合に属していることから、実質的に47都道府県すべてにドクターヘリが配備されていることになります。
ドクターヘリのスタッフ
数人のスタッフと限られた医療機器・薬品でさまざまな現場で最善を尽くす、高い専門性を持つ精鋭です。スタッフ同士また消防や医療機関との連携も重要。ヘリコプターは運航会社が管理し、パイロット・整備士・CSは運航会社に所属します。
搭乗スタッフ
フライトドクター
救急医療に精通した医師。ドクターヘリに乗り込んでいち早く救急現場へ向かい、患者の治療にあたります。幅広い医療知識と技術を有し、現場では素早い判断力と決断力が求められます。
フライトナース
ドクターヘリに乗り込み、救急現場でドクターと連携して患者の看護を行います。携行する医療資機材や医薬品などの管理もします。救急現場での看護を実践するための知識や技術、観察力や判断力が求められます。
パイロット
整備士とともに機体を確認し、ドクターヘリを操縦して現場へ向かい、初期治療を施した患者を医療機関へ搬送します。ヘリを安全に、患者に負担がかからないように運航する操縦技術が求められます。天候状態にも気を配ります。
整備士
ヘリの保守点検だけでなく、飛行中はパイロットをサポートし、現場の消防隊と連絡を取り合い、臨時着陸場(ランデブーポイント)に降りる手配をします。またヘリの患者を運ぶストレッチャーを操作するなどのサポートも行います。
地上スタッフ
CS(コミュニケーションスペシャリスト)
ドクターヘリ通信センターで常に待機し、消防からの出動要請が入ると乗組員に出動を指示します。消防と臨時着陸場を調整し、ヘリの運航支援を行いながら、消防・医療機関との連絡を取るなど、ドクターヘリの安全運航を基地病院から支援します。
愛知医科大学病院のドクターヘリ
愛知県は2002年1月、全国で4番目にドクターヘリを導入し、愛知医科大学病院がその基地病院となりました。以来、これまでの累計出動件数は9,000件超にのぼっています。東日本大震災時には被災現場へ出動して救命・救助活動を行いました。近年は医療資機材の充実にも力を入れ、現場や搬送中における特殊救命処置・症例にも積極的に取り組んでいます。
愛知医科大学病院は2023年1月、愛知県から重症外傷センターに指定されました。これにより、救急外傷医療の進化とともに、ドクターヘリの運航がより活発化することが期待されています。
活動範囲
愛知医科大学病院のドクターヘリの活動範囲は片道70㎞(20分)圏内で、愛知県全域をカバーします。要請に応じて隣県の救命活動も行います。
出動件数
掲載冊子
こちらの記事掲載冊子は「ForMマガジン 03」です。
※2023年12月時点の取材内容
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