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DX時代 変わりつつある医学部教育
医学部の学びは、文部科学省が定める「医学教育モデル・コア・カリキュラム」(以下、モデル・コア・カリキュラム)を骨格としています。モデル・コア・カリキュラムは、各大学が策定するカリキュラムのうち、全大学で共通して取り組むべきコアの部分を抽出し、モデルとして体系的に整理したものです。各大学では、これに創立の理念や大学の特長、地域などに根ざした独自の肉づけをしてカリキュラムを完成させます。
2024年度からのモデル・コア・カリキュラムの基本的な理念として「2040年以降の社会も想定した資質・能力」が挙げられています。これから医学部教育を経て、皆さんが医療人として活躍するとき、医療と社会を取り巻く環境はどのように変わっているでしょうか。急激な人口減少や高齢化率の上昇が予想されるなか、医師の頼もしい味方となってくれるものに、将来医療現場で活用される新しい科学技術があります。その中心となるのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
そのため、モデル・コア・カリキュラムでうたわれている医師として求められる基本的な資質・能力に、新しく「IT:情報・科学技術を活かす能力」が加えられました。医学部の学びでも「倫理を含めて基盤となる情報・科学技術を活かす能力について、その素養を身に付ける」ことが求められています。
各大学では、臨床実習で最新のテクノロジーを体験する機会を設けるだけでなく、教育そのものにもテクノロジーを積極的に導入し始めています。VR、AR、AI、ロボット、リモートセンシングといった毎日のようにニュースでとりあげられる技術を取り入れて、医学生が効率よく学び、議論し、網羅的に臨床例を体験できるように工夫しています。
同じくモデル・コア・カリキュラムで強調されている「診療参加型臨床実習の更なる促進」や、法改正により可能になった、臨床実習での学生の医業を進めるために、医学部に最先端のシミュレーターを導入する動きも進んでいます。医学部を志望するみなさんは、ぜひ医学部教育のテクノロジーにも焦点をあてて、各大学の学びを知ってほしいと思います。それが、2040 年の医療人になったとき、みなさんのキャリアにとって、欠かせない学びになるからです。
医学教育モデル・コア・カリキュラムは6年ごとに改訂されますが、令和4年度改訂版であらたに医師として求められる基本的な資質・能力のひとつとして加えられたのが「IT:情報・科学技術を活かす能力」です。
発展し続ける情報化社会を理解し、人工知能等の情報・科学技術を活用しながら、医学研究・医療を実践できることが求められています。
医学研究・医療等の場面で、情報科学技術を取り扱う際に必要な倫理観・デジタルプロフェッショナリズム及び基本的原則を理解します。たとえば、デジタル情報や科学技術の活用における社会的格差が医療や福祉にもたらす影響や倫理的問題を議論できることがあります。
安全かつ質の高い医学研究・医療に必要な情報・科学技術に関する基本理論を理解し、その知識を自身の学修や医療へ適応する姿勢を体得します。たとえば、医療に関連する情報・科学技術(医療情報システム、ウェアラブルデバイス、アプリ、人工知能、遠隔医療技術、loT等)を理解し、それらの応用可能性について議論できることなどがあります。
遠隔医療を含む患者診療、学修の最適化に有効なICTツールの実践スキル及びデジタルコミュニケーションスキルを修得します。たとえば、自己学修や協同学修の場に適切なICT(eラーニング、モバイル技術等)を活用できることがあります。
医学教育モデル・コア・カリキュラムでは、医師として求められる基本的な資質・能力のひとつとして「RE:科学的探究」も挙げられています。これは、医学・医療のための医学研究の重要性を理解し、科学的思考を身に付けながら、学術・研究活動に関与して医学を創造する力を持つこととされています。
現代の医学研究では、ビッグデータの活用を含めたデータサイエンスやAIの重要性が高まっています。そのため、医学部では文部科学省の「数理・データサイエンス・Al教育プログラム認定制度」に選定された教育プログラムを持つ大学が増えています。
日本の医学部教育において、ICT、AI(人工知能)、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、シミュレーター、ロボット、データサイエンスなどのテクノロジーは、さまざまな形で活用されています。
たとえば、VR技術を活用したトレーニングや教育では、実際の医療現場での実習が難しいシチュエーションを再現したり、シミュレーションを行ったりすることが可能になっています。ロボット技術も医療現場で活用されており、手術支援ロボットが開発されています。
医学部でもこれらのロボットの操作を体験したり、ロボットの模擬患者さんを相手に医療面接を行ったりする実習なども行われています。シミュレーターの進化も著しいものがあります。たとえば、妊婦の腹部エコーのシミュレーターでは、学生がエコーを当てると、上手に行えば胎児の心臓が動いているところまで観察できるほどリアルです。
日本の医学部教育においてはさまざまなテクノロジーが活用されており、今後もその活用範囲は拡大していくことが予想されます。ぜひ大学案内やオープンキャンパスで、各大学がどのようにテクノロジーをカリキュラムに取り入れているかにも注目してみてください。
現在の医学部のカリキュラムは能動型学修でグループ討議をしながら学ぶスタイルに重点が置かれています。このグループ学修の効果を高めるために電子黒板や、各グループと教員が双方向でつながるシステムなどが導入されています。
講義は、オンデマンドで繰り返し復習ができたり、リモー卜講義のシステムが整備され、遠方の講師による講義や、他大学との連携講義も容易になりました。また、顕微鏡画像のデジタル化、人体解剖の3Dシステム、バーチャル患者システムなど、さまざまな学修手段でDXが採用されています。
医師法の改正により、今後の臨床実習において医学生が患者さんに医業を行うことが増えてきます。そのため、臨床実習に進む前に学生の診察技能を評価するOSCEの重要性が高まりました。
また臨床実習の中でも、患者さんに対して安全に医業を行う技能をシミュレーターでトレーニングできるよう、シミュレーションセンターを充実させる大学が増えています。そこでは多種多様なリアルで高機能なシミュレーターが導入され、実践的なテクニックを効率的に、繰り返しトレーニングすることができます。
VRの技術を活用すると、学生たちに教員が説明を加えながら臨場感あふれる実習が行えます。VRゴーグルをつけると教室にいながらにして、臨床現場で体験しているような感覚になり、すべての学生が同じ条件で治療の様子を間近に、かつ広い範囲を見ることができます。
他にも、手術室からハイビジョンのライブ中継を行ったり、手術中の術野を高画質で鮮明に映すモニターを設置し、さらに術野を拡大して見ることもできるなど、大学病院の臨床現場でも学生の実習のための新しいシステムを導入しています。
ほとんどの大学病院では高度先進医療の推進のため、さまざまな先端のテクノロジーや医療機器を導入しています。患者さんへの侵襲が少ない技術の普及はもとより、Alを導入したスマート医療化も始まっています。
臨床実習ではこのような環境の中、先端医療機器やシステムに触れることができます。遠隔で操作し精密な手術が行える手術支援ロボット、外科手術と血管内治療が同時に行えるハイブリッド手術室、遠隔医療システム、Al問診、Al画像診断など、さまざまな技術が日進月歩で進んでいます。
こちらの記事掲載冊子は「ForMマガジン 03」です。
※2023年12月時点の取材内容
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