医学部医学科の野上達也准教授(専門診療学系漢方医学領域)らの研究グループが、国内の医師を対象に診療における漢方薬の使用状況などを調査。その結果をまとめた論文が8月13日に、日本東洋医学会の英文学術誌『Traditional & Kampo Medicine』オンライン版に掲載されました。
日本の伝統医学である漢方医学は、現在、さまざまな臨床現場で用いられています。漢方薬を安全・有効に利用するためには、「証」と呼ばれる漢方医学的診断(漢方医学の独自の理論に基づき、病態だけでなく体質などを含めて診断する方法)が求められるため、2001年に医学部の教育カリキュラムに組み込んでいました。しかし、依然として医療現場を担う医師の大半は漢方医学教育の機会に恵まれておらず、「証」に準拠した漢方診療の実施状況も把握されていませんでした。
研究グループでは、国内の医師が日常診療で漢方薬をどのように利用し、漢方医学に対してどのような問題意識を持っているかを把握するため、2024年1月23日から24日にオンライン調査を実施。初期臨床研修医を除く回答者652名のうち、86.7%にあたる565名が漢方薬を活用している実態を明らかにしました。一方で、約半数が漢方薬を処方する際に「証」を考慮せず、西洋医学的な診断のみを根拠に漢方薬を処方しており、「十分な治療効果が期待できない」「患者の治療満足度が上がらない」といった懸念が生じていることも判明。さらに、漢方薬の有効性に関するエビデンスの集積と、漢方医学的診断の標準化を望む医師が多いことも分かりました。
野上准教授は、「国内における漢方薬の高い普及率の証明に加え、『証』を根拠とした漢方診療の普及、徹底など、取り組むべき課題も明らかになりました。漢方医学に関する大学卒業後の教育体制の充実や、AIなどを活用した『証』による診断支援ソフトの開発といった具体的な対応策への期待の声も寄せられています。今回の調査結果を踏まえ、漢方医学を専門としない臨床医が、より有効に漢方薬を活用するための研究開発を進めるとともに、必要な施策や体制を整えるために尽力したい」と話しています。
なお、『Traditional & Kampo Medicine』に掲載された論文は、下記からご覧いただけます。
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データ提供:東海大学