イントロ
原作は『BE・LOVE』(講談社)にて、2011年から2018年まで連載された医療漫画。主人公は、産休の養護教諭の代わりに産休補助教員として小学校の保健室を預かることとなった牧野。彼は赴任する前までは帝都大学附属病院の小児科医だったが、愛想の無さと口のきき方の悪さ、態度の大きさを問題視されていた。そのため、学校に専門医を試験配置することを決定した医師会からの要請という口実で、小学校に異動させられたという背景をもつ。子ども達の未来を守る最後の砦たる保健室を舞台に、小学校に赴任した仏頂面の「学校医・牧野」が、類稀なる観察眼で異変を見抜き子供達と父兄を救ってゆく物語。
原作をベースに、2024年10月より日本テレビ系列にてテレビドラマが放送。ドラマでは、小児科医の牧野を松下洸平が演じ、「学校医」として東多摩第八小学校に赴任した場面から始まる。医師を学校に常駐させるという新たな試みで大学病院から送られた、口も態度もでかい小児科医・牧野が、その観察眼で「言葉にできないSOS」を見抜き、未来へ向かう子ども達の背中を押す保健室ヒューマンドラマとなっている。2024年12月21日に涙なみだの最終回が放送された。
作中の病気あれこれ
・身体症状症
ストーリー(最終話)
卒業式まで残り僅かとなり、学校医としての任期を終えて牧野も病院に戻る日が近づいていた。そんな中、牧野が学校へ派遣される理由となった過去の患者である真琴が、病院の医師に「胸の痛み」を隠していることを知る。精神的な原因があるのでは診断した牧野は、その「痛み」を取り除くべく、あの手この手を使うのだが―――。
病気の概要
患者の自覚症状と合う身体的異常や検査結果がないにもかかわらず、痛みや吐き気、しびれなどの身体症状が長い期間続く病気。体に力が入らなくなったり、けいれん発作のような症状が出現したりすることもある。身体症状は体のさまざまな場所に現れ、症状の種類も変化する。多くの場合で、仕事や学校、家庭など、日常生活を送る上で支障が生じる。身体の病気ではないという診断を受け入れられず、医療機関を転々とする方もいる。
症状の種類
身体症状症
痛みや胃腸症状、しびれなど、さまざまな身体症状が続くのだが、医療機関で適切な診察、検査を行っても身体的な病気や薬による影響としては十分に説明できないという病状。
病気不安症
「自分は重い病気ではないか?」、「病気にかかりそうだ」という不安な気持ちが非常に強くなる病状。実際には、身体の病気は存在しないか、あってもごく軽度で、気持ちの状態と実際の身体的な状態にギャップが生じてしまう。
変換性/転換性障害
脱力や麻痺、筋肉の強い突っ張り、歩けない、などといった運動に関する症状や、皮膚の感覚がおかしい、見えない(一部しか見えない)、聞こえない(聞こえにくい)、といった感覚の症状が認められる。また、声が出ない、のどの中に異物感があるという感覚(所謂、ヒステリー球)もしばしばみられる。
治療法
患者にとっては辛い症状なので、身体的な問題がないということを受け入れることは難しいが、まずは身体的な病気がないことを理解、納得することが大切。その上で、普段に近い日常生活を送ることを目標とし、薬物療法、精神療法を行っていく。
薬物療法
抗うつ薬や抗不安薬が有効な場合がある。ただ、薬物療法の効果が乏しい場合も多く、その結果、様々な種類の薬剤が多量に投与されることがある。その場合は、それぞれの薬剤の効果を見極めつつ、減薬、整理を行うことが必要となってくる。
精神療法
症状が悪くなるきっかけや状況、症状が良くなる要因を明確にし、症状が軽くなるような行動を促していきます。また、症状の原因となるストレスについて理解し、フォローしながら対処法を考えていくことが大切となってくる。
調べて納得
身体症状症の原因は、心身の疲労や環境変化などのストレスが何らかの形で患者さんの症状の形成にかかわっているという考え方があります。しかし、必ずしもストレスが原因とは言い切れませんし、実際に脳の中で何が生じているのかは明確にはわかっていません。また、うつ病や不安症などほかの精神疾患が合併する場合もあります。一つ言えることとして、身体症状症では、患者さん自身は紛れもなくその身体症状による苦痛を感じており、詐病や仮病とは異なるということです。
ドラマ内で牧野は、真琴の母親の死がストレスの原因となっているのではないかと考え、真摯に寄り添っていきます。医師でも先生でも友人でも親でも、とにかく心に刺さった棘を上手に抜いてあげられるサポーターが必要なのだと感じさせられました。
おわりに
ドラマ「放課後カルテ」内では他にも「IgA血管炎」・「気胸」・「AED」・「自傷行為」・「インフルエンザ」・「溶連菌感染症」・「リウマチ熱」・「鉄欠乏性貧血」・「場面緘黙」・「完全大血管転位」などの病気が扱われてきました。ドラマを通じて何よりも、「相手をきちんと見る(診る)こと」そして「相手の未来までを見る(診る)こと」が大切なのだと気づかされました。牧野のような人間になりたいと思わせてくれるいいドラマでした。
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